「北欧はデジタルで学力が下がった」は本当か?
「北欧はデジタルで学力が下がった」は本当か?最初に結論
結論から言うと、この説明は成立しません。少なくとも「デジタル化だけが原因」という読み方は、データのレベルでは持ちません(かなり無理があります)。
まず前提として、PISA2022ではOECD全体で学力が低下しています(数学−15点、読解−10点)。これはコロナ禍を含む国際的な下振れであり、北欧に固有の現象ではありません(OECD, 2023)。*もう少し長いスパンで見ないと何とも
さらに「北欧」を一枚岩で語る事にも疑問が残ります。2022年時点でもスウェーデン、フィンランド、デンマークはOECD平均を上回り、ノルウェーは概ね平均水準です(OECD, 2023)。この時点で「北欧がデジタルで壊れた」と一括りにするのは無理があります。
より重要なのは、低下のパターンや背景が国ごとに異なることです。数学の低下が大きい国、読解の低下が目立つ国、比較的安定している国が混在している。つまり同じ「デジタル化」という条件でも結果が異なる。ここで単一原因説は崩れます。
では、何が起きているのか考えてみましょう
少なくとも次の要因が重なっています:
① 国際的な学力低下の波(コロナ含む)
② 社会経済格差(SES)の拡大
③ 移民・言語背景と初期教育支援
④ 学校制度(分権化・学校選択・分離)
⑤ 教師支援・授業規律・学習意欲
⑥ デジタル機器の使い方
これは典型的な多因子モデルです。これらの要因は単独で作用する事もあれば相互に関連しあいます。単純化は本来の像を見えにくくするだけなんですよね。
例えばフィンランドでは、教育当局自身が学力低下の背景として、SES格差の拡大、読解の二極化、学習意欲の低下、デジタル環境やSNSの影響などを挙げています(Finnish Ministry of Education and Culture, 2023)。PISAデータでも、授業中にデジタル機器で注意が逸れる(後述)と答えた割合はOECD平均を上回っています(OECD, 2023)。
スウェーデンはさらに制度要因が大きい事が示唆されています。1990年代以降の分権化と学校選択制は効率性の一方で学校間分離と不平等の拡大を招いたと指摘されています(OECD, 2015; European Commission, 2020)。ここに授業規律や授業体系の変化とそれに対する適応の問題が重なっているわけです。これはデジタルの問題というより制度設計の問題の方が大きいといえるでしょう。
ノルウェーでは、基礎的学力未満の生徒が増加する一方で、教師は「事前知識不足や欠席など、教授そのものを妨げる要因の増加」を報告しています(IEA, 2020)。つまり学習基盤の問題の問題とその課題に対する対応過程で生じた低下とも考えられます。
一方、デンマークは2022でも比較的安定しており、SES格差も相対的に小さい。これも「北欧=同じ原因ではない」ことを示しています。
ここまで整理すると明確です。
デジタルは少なくとも「主犯」ではない。
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